DMZというのは剛の池の南にある小島で、ここではサギ類が縄張り争いをせずに仲良く佇むのでこう呼んでいるのだが、池の北端を縄張りにするアオスケがここに来ることはあまりなくて、たまに島の北側に陣取って自分の縄張りを凝視する様子を見せる。
妻がボクの横でアオスケに手を振るとたちまちに気づいたようで視線がこちらへ向いた。
てっきりこっちに来るものかと思っていたのだが、そもそもボクらがこれを見ていたのはアオスケの縄張りではなかったのである。で、アオスケの縄張りに向かってみると、
ちゃんとアオスケが待っていた。
ボクらの他にも水鳥に餌を与える人が少なからずいるが、これをちゃんと見分けている個体は、しばしばこのように、餌の人の姿を視認すると自身がいつも餌をもらう縄張りに移動して待ち受ける、という行動を示す。存外サギたちは頭がいいのだ。思えばダイサギのチュウスケも、ボクらの行動を先読みして繰り返し「まだもらってませんよ」みたいな顔をして待ち受けるという奇行を見せた。
完全に、奥様はアオサギ使いの魔女なのである。
去年はこの時期のヒドリガモは敢えて人に近づこうとしなかったものだが、今年の子らはさっそく池のボートを追いかけ回して餌を強請っていた。剛の池経験値の高い連中が先遣されたものらしい。